終了! 第7回勉強会のお知らせと報告 2013年2月16日(土)

2月16日(土)13時から交通大学・綜合一館613 にて行います。
23日(土)ではなく、16日に変更しましたので、取り急ぎお知らせいたします。
陳姿菁先生と工藤節子先生が発表する予定です。詳細はまた、お知らせいたします。
            ■■■ 記録 ■■
                        文責 武田

於 交通大学 総合一館 632号室
参加者 陳姿菁先生(発表者)、工藤先生(発表者)、上條先生、武田
日時  2013216日(土)13時半~17時過ぎ

今回は、陳姿菁先生、工藤先生に発表していただきました。
以下、発表内容と、質問への回答をまとめて紹介します。

1. 陳姿菁先生
昨年夏の名古屋の世界日本語教育学会、昨年十二月の淡江
大学の台湾日本語文学会の大会の発表を併せて解説。

 3年生36名の学生を対象とした高級日語会話の授業で、
「交差」を用いて実践し、終了後アンケートを行った。アン
ケートは設問と自由記述からなっており、結果のうち設問に
ついては統計的に、自由記述についてはKJ法を用いて分析(
解化の段階まで)した。

 授業では、「台湾と日本との比較」をテーマに扱った。事前
2回、交差のウォーミングアップとなる活動を、昔話を題材
にして行った。2人ひと組のペアでまとめたものを、もうひと
組のペアのものと相互に提供・参照することで交差を行った。
こうすることで、それまで紋切り型のありふれた発想から、
作業後は話題性や質に変化が見られた。

 今回の工夫として、
なぜこういった作業をするのか、意義や目的を丁寧に説明
たこと
作業後のフィードバックを実例を基に詳しく行ったこと
が挙げられる。

 従来の自由なやり方と交差を用いた今回のやり方との対照
で、さまざまな学習者の声が出たが、交差を取り入れた授業
実践はおおむね好評だった。

 いろいろな人の意見をまとめたり、システマティックにまと
めたりするのには、KJ法は向いている。KJ法での図解化まで
の過程は易しいものではない。しかし、現実にフィールドに
いたからこそ、一種フェルトセンスが働き、まとめることが
できるのだろう。

《感想》
 授業実践からアンケートの分析まで過程を一通り聞くことが
でき、有意義であった。今回はKJ法を用いた分析であった。
私もはるか以前にバイト先の職場のミーティングでKJ法に
参加したことがある。そのときやったのは全員で意見を出し
合いながら、短冊を作りそれをグループ分けするところまで
であった。今回は、さらに図式化までしている点、分析を行う
のが一人(陳先生)である点が新鮮であった。これを機会に、
質的研究の代表的な手法を知っておきたいと思うようになっ
た。

 実践上の工夫は、何気ないようでいて、じつは見落としがち
なことである。このように働きかけることで、授業自体に学生
も主体的に取り組めるようになるのだろう。私は以前補修班
で、陳先生の授業のウォーミングアップの段階までの部分を
やったことがあるが、好評だった。さらに先までの実践例と
してたいへん参考になった。私も機会があったら、授業にさら
に先のこうした実践を取り入れてみたい。



2.工藤先生
 前回の2月の発表の続きで、前回はStep8までだったが、今
回はStep9以降を扱った。

 C学苑のS先生をして花蓮の時代が教師らしくいられたと言
わしめるものは何か、ということを端緒とする質的分析であ
る。生活力がある生徒、守りと挑戦を支える校長がいたこと
が背景にある。

 S先生には、生活の場にまで及ぶ生徒との交流が本当に楽し
く感じられた。また、挑戦と見守りの主体は校長先生(S先生
に対する)だけではなく、S先生自身(生徒たちに対する)もそ
うであった。

 こういったことがこれまでのStepの分析から浮かび上がり、
それをもとに
O: 相互に学ぶ関係から生まれる楽しさ
P: 気づきを可能にする挑戦と見守り
Q: 信頼による見守りと挑戦
を設定し、Step12までの分析を行った。

 当時のS先生は、
まだ完成していない
挑戦し続ける
といった特性を持つ「気づきの主体」であったといえるだろう。

 今後は、今の教室(C学苑)をどう表すかを検討していきたい。
普通の教室との違い(教材、学生、目的、目標など)は何か、
また言葉プラスアルファの部分があるとするならばそのアル
ファは何か、を探っていきたい。


《感想》
 Step12までの分析で、S先生自身のXが浮かび上がってきた
ように思われる。工藤先生は今回の研究はとくに論文の形にさ
れる予定はないそうだが、研究の成果を共有できたのは幸いだ
った。90歳になられるS先生の教師生活で、花蓮の3年間は、
このように振り返ることができる幸せな時間だったのである。
その後の31年間の教師生活に比べて3年間は短かったのかも
しれないが、その3年間を持てたことが幸せだったのではな
いだろうか。

 S先生とは時代が違うものの、私もこのように「教師らしく
いられた」といえる充実した時間を少しでも多く持ちたい。
そのためには、外的環境だけでなく、主体たる自分の意識の
持ちようも大切であることが分かった。惰性に流れないよう
にしたい。また、S先生だけでなく、この校長先生もいい味
を出していて、自分も将来ベテランの教師になったときに、
こうありたいと思わせてくれた。

このように、ひとりの教師についての振り返りから、いろい
ろなことが学ぶことができた。今の教室を表すプラスアル
ファも興味深い。ぜひ次の工藤先生のご発表を待ちたい。

参考
平野婦美子『女教師の記録 (現代教育101) [単行本]
国土社 422ページ
S先生が花蓮時代に読んで感動し影響を受けた本だということです。
これは復刻版で、元々は1940年発刊のものです。
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